心臓血管外科
構造的心疾患チーム
構造的心疾患に対する
カテーテル治療のパイオニアとして
名古屋ハートセンターのSHDチーム

 SHDとはStructural heart disease(構造的心疾患)のことで、心臓の構造的な理由で起こる疾患の総称です。当院では、大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症を始めとした弁膜症、心房中隔欠損症や動脈管開存症などの先天性心疾患、卵円孔開存患者、心房細動患者の脳梗塞予防のためのカテーテル治療等、多岐にわたる治療に対応しております。特に当院では、カテーテルによるSHD治療に力を入れており、年齢やADL、既往歴で外科的加療が高リスクでできない患者様に対し、心臓血管外科医師も含めたハートチームで最適な治療方法をディスカッションし、カテーテルでの治療を多く提案しております。

弁膜症について

 既に経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は日本全国に広まり、高齢者の重症大動脈弁狭窄症の第一選択となり御存知のところと思います。TAVIは当院が愛知県内で最も施行件数が多く、2023年に通算症例数は1000例を超えました。豊富な経験を持つ山本真功循環器内科部長をはじめとする当院のSHDチームは、他のTAVI治療が可能な施設から困難症例をご紹介いただくことも多く、透析患者様に対するTAVIについても、2020年から可能となり多くの症例を施行しております。

 また、MitraClip(Abbott社)を用いた経カテーテル僧帽弁形成術では、術者の山本真功、エコー医の加賀瀬藍はMitraClipのNational training facultyとして、他施設への指導も行っております。また、当院では、2024年4月からPASCAL(Edwards社)を県内で最も早く導入し、更に治療の幅が広がっています。外科的手術が困難な重症僧帽弁閉鎖不全症の患者様がいらっしゃいましたら、一度御相談頂きますと幸いです。

 今後の見通しとして、三尖弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療も本邦で開始される予定であり、当院においても導入予定です。今後も皆様に弁膜症に対する新しい治療の選択肢をご提案できるよう、日々研鑽を積んでまいります。

先天性心疾患について

 先天性心疾患で最も多い疾患は、心房中隔欠損症と言われています。ほとんどは症状がないことが多いですが、生まれた時から心負荷がかかり続けていることから、実は症状はあっても自覚していない患者様が多いのです。治療の目安としては、息切れ・動悸・浮腫などの症状があったり、症状は乏しくても心エコーで右心負荷所見(右房・右室拡大)を認めたり、肺体血流比(Qp/Qs)が1.5以上を参考にしています。カテーテルでの治療は2泊3日程度で可能です。カテーテル治療が難しい場合は、外科的加療を検討しますが、低侵襲外科治療(MICS)により傷口をかなり小さく治療できる場合が多いので、若年の患者様でも治療後に大きな傷口が残らず治療が可能となっています。治療適応や治療方法について検討が必要な患者様がいらっしゃいましたら、一度御相談頂きますと幸いです。また、稀な疾患ですが、動脈管開存症についてもカテーテルでの治療が可能です。

脳梗塞予防について

 卵円孔は胎児のときに空いていた心房中隔が、出生後膜状構造によって閉鎖されますが、5人に1人は膜状構造に隙間が空いていると言われています(卵円孔開存症)。多くは無症候性で大きな問題になることは少ないですが、卵円孔開存症が若年性脳梗塞の原因となる場合があります。卵円孔の膜状構造は、腹圧の上昇と共に血流が右房から左房に流れ込むため、静脈血内の血栓等が左心系に混入することから生じます。その為、腹圧があがる動作後に脳梗塞を発症することがあります。卵円孔をカテーテルで閉鎖することによって、若い患者様の今後の脳梗塞を予防できる可能性がありますので、若年性脳梗塞の患者様がいらっしゃる場合、一度御相談頂きますと幸いです。


※SHDチームの山本真功は企業プロクターの資格があり、全国の医師に対する指導を行っています。