心臓画像診断
MRI
心臓 MRI 検査

MRI(磁気共鳴画像撮影)とは、電磁気の力を利用して体の内部を撮影する装置です。体内の組織にある水素原子からの信号を受信し、コンピュータ解析して画像化します。心臓の収縮や拡張を動画でとらえることにより、心機能解析や心臓の形態や組織性状の評価に適しています。CTやX線検査のように放射線による被ばくを心配することもありません。造影剤を使わずに心臓の動きを解析し、心臓の栄養血管である冠動脈の撮影を行うことが可能です。


さらに、造影剤を使用すれば、心臓組織内の変化やダメージを検出し、より詳細な診断につなげることができます。ちなみに、心臓MRIの造影剤は“ガドリニウム系造影剤”であり、心臓CTなどで使用する“ヨード系造影剤”とは物質が異なり、比較的副作用が少ないと言われています。


当院にある MRI 装置は、MAGNETOM Sola Cardiovascular Edition®(Siemens社製)で、心血管系の検査に特化して開発されたプレミアムクラスの 1.5T 装置です。

心臓MRI検査でどんなことがわかる?

心臓MRIは、他の検査に比べより専門的な検査であり、多くの詳しい情報が得られます。心電図や血液検査、心エコーなどの検査の結果、必要な場合に勧められます。

1.非造影心臓 MRI

  • 心臓の動き、形態、心臓内の血流や弁膜症などを動画で描出します。
  • 心筋の炎症や浮腫を描出します。
  • 心臓の栄養血管である冠動脈の狭窄がわかります。
  • スクリーニング検査として位置づけられます。

2.造影剤心臓 MRI

  • 心筋組織の障害の部位や範囲、重症度を可視化します。心筋梗塞や心筋症の障害部位がわかります。
  • ATP という負荷検査薬を用いると、心筋に十分な血液が取り込まれているかどうか、がわかります。心筋組織に相対的に血流が足りないことを、「心筋虚血」といい、冠動脈バイパス術や冠動脈ステント植込み術が必要かどうか判断する根拠となります。
  • 精密検査として位置づけられます。
造影なしで得られる主な心臓MRI画像

心機能、形態(Cine画像)

  • 造影剤なしで、心機能・形態評価を行うことができます。他の画像検査ではわかりにくい部分も良好に描出されます。
  • 心筋の炎症や浮腫の有無を確認できます。

冠動脈

  • 冠動脈は心筋へ酸素や栄養素を運ぶための血管で、狭窄や閉塞を生じると、狭心症や心筋梗塞の原因となります。
  • 造影剤なしで、心臓の栄養血管である冠動脈の撮影ができます。
造影剤を用いて得られる主な心臓MRI画像

心筋障害の部位、程度(遅延造影画像)

造影剤を用いると、心筋梗塞や心筋症など、さまざまな病気の鑑別が可能です。心筋組織のダメージの部位や程度などを詳しくみる検査です。

  • 心筋組織障害を可視化し、心筋疾患の病態の鑑別や重症度の判断に用いられます。
  • 心筋梗塞では、障害された心筋の範囲や深達度を見極めます。ごく小さな心筋梗塞や他の病気を見つけ出すことも可能です。


心筋内の血流障害(心筋パフュージョン画像)

心臓に負荷をかけて、心筋内に必要な血液が取り込まれているかを画像化します。心筋に血液を送る冠動脈が狭窄している可能性があります。

  • 負荷時に信号低下している部位(黒く見える)は、心筋内に血液の取り込みが足りていない部分を示します。
  • 右図では、負荷時に左室下部中隔、下壁、下後壁および側壁において造影不良域を認めます(矢印部分)。右冠動脈の有意狭窄が考えられ、血行再建手術が考慮されます。
どんな人に心臓MRI検査が勧められるか?
  1. 心エコーで心臓の動きや形態に異常を認めたとき
  2. 心電図異常、重症不整脈
  3. ステント留置後、バイパス手術などの術前・術後の虚血の評価
  4. 冠動脈の狭窄が疑われたとき
  5. 心不全、心筋症、心筋梗塞の精査目的
当院で行う、その他の MRI 検査

血管MRI

大動脈瘤や大動脈解離などの大動脈疾患や、頭頸部、体幹部、下肢などの血管の検査を、造影剤を使わずにおこなうことができます。血管閉塞や狭窄の有無を確認することができます。


頭部MRI

脳梗塞や脳出血、変成疾患などの診断に用います。造影剤を使用することなく、脳血管、頚動脈の病変の描出も可能です。

MRI 検査を受けるときの注意点
  1. 装置内部は狭い空間であり、閉所恐怖症の方は事前にお知らせください。
  2. 検査装置は強い磁場が働いています。
    • 金属類(めがね、ヘアピン、時計、アクセサリー、ベルト、金属の着いた衣服、鍵、補聴器など)は必ず外してください。
    • 磁気カードや携帯電話などはデータが損壊することがあり持ち込めません。
    • アイメイク、カラーコンタクトレンズ、UVケア用品、カイロ、防寒用下着などは、素材により熱を持つことがあります。
    • 体内に心臓埋め込み型デバイス(ペースメーカーなど)、人工内耳、義眼、金属などがあると検査ができない場合があります。
    • 妊娠中の方は検査ができない場合があります。
  3. 食事制限はありませんが、検査1時間前からの飲食はお控えください。
  4. 検査内容によっては、前日夜からカフェインの摂取をお控えいただくことがあります。
MRI 検査中の注意点
  1. 検査時間は30-60分で、患者様の病態や検査目的などにより変わります。
  2. 10~20秒ほどの息止め指示が何回か入ります。
  3. 検査中、いろいろな種類の比較的大きな音が聞こえますが、心配はいりません。
  4. より診断能の高い画像を得るために、検査中はできるだけ体を動かさないでください。
  5. 検査中寝てしまうと画像データ収集に時間がかかり検査時間が延びる場合があります。
  6. 検査中に気分が悪くなるなど何か変わったことがありましたら、手元のボタンを押してください。操作室のスタッフと会話ができます。