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⑥人工弁について
人工弁は大きく分けて機械弁と生体弁があります。どうして2種類あるかというと、それぞれに長所・短所があり、両方の長所を兼ね備えた人工弁は、現在の医療技術をもってしても開発されていません。
機械弁は、カーボン・チタンで出来ているため、耐久性が非常に高いのが長所です。しかし、機械が体の中に入るわけですから、血液がそこで固まろうとして、血のかたまり(血栓)を形成することがあります。これを防ぐため、血液をサラサラにする薬・ワーファリンを飲まなくてはいけません。ワーファリンは、肝臓で作られる”凝固因子”という血を固める成分を作らせにくくする薬です。血をサラサラというと聞こえがいいですが、裏を返すと出血しやすい状態を作っているお薬です。そのため、定期的に血液検査を行って薬の効き具合を調整する必要があります。また、凝固因子はビタミンKが材料の一つになるため、ビタミンKを多く含んだ食べ物(納豆、クロレラなど)を控える必要があります。少々わずらわしいのに加え、出血をした際に止まりにくいため、機械弁にワーファリンが必要なことを短所と考えています。
生体弁は、牛やブタの組織を加工して作られた弁です。生体の組織を使用しているため、血栓がつきにくく、ワーファリンが不要となることが長所です。短所としては、10年から15年で弁が劣化してきたり、カルシウムがついて(石灰化)固くなってしまうことがあることです。
このため、通常は年齢で機械弁か生体弁かを選ぶようお勧めしています。65歳をひとつの基準とし、それよりも若い方には機械弁を、高齢者の方には生体弁をお勧めしています。ただし、ワーファリン投与を望まない症例(妊娠・出産を控えた女性やアスリート、時間に追われるビジネスマンなど)は、若年者であっても生体弁を選択することもあります。患者様ごとの生活スタイルに合わせた人工弁の選択が必要です。