低侵襲心臓手術
心臓血管外科の手術では、胸の中央にある“胸骨”を縦に切って手術を行います。心臓全体を観察できるため、視野に優れ様々な疾患に対処できる、昔からの“Golden Standard”な方法です。
この方法に加え、骨を全く切らない低侵襲手術(Minimally Invasive Cardiac Surgery MICS)が開発され発展しています。当院は東海地区でいち早くMICS手術を取り入れており、なるべく傷の数を減らす“Less Satellite Hole Method”として学会にも取り上げられています。
2018 年からは3D内視鏡を用いた内視鏡MICSも行っています。
内視鏡は奥深くの観察が容易になるため、視野の深い僧帽弁疾患に対して威力を発揮します。
詳細な観察を要する僧帽弁形成術のQualityをあげることができ、短期成績はもちろん、長期成績もよくなります。当施設での内視鏡・MICSの良好な成績が論文にとりあげられています。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1155/jocs/7846083
また、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症、三尖弁、メイズや左心耳閉鎖などの不整脈手術も内視鏡MICSで行っています。内視鏡MICSでの胸の傷は3㎝程度で、その他はカメラポートと5㎜のポートのみとなり(足の付け根に人工心肺のため2-3㎝の切開があります)、非常に美容的に優れています。
また、大動脈弁疾患に関しては、上記の内視鏡MICSに加え、腋窩アプローチでのMICSも行っております。皮膚切開を脇の下に持ってくることで、正面からは傷が見えなくなるよう工夫・改良しており、論文掲載されています。
https://www.annalsthoracicsurgery.org/article/S0003-4975(20)30572-5/fulltext
内視鏡/MICS 手術は、美容的に優れているだけでなく、早期の仕事復帰も可能なため、若い患者さんから非常に好評を得ております。
また、骨を全く切らず呼吸機能も温存されるため、実はご高齢の方にもお勧めの術式となっています。今まで高齢を理由に心臓手術を躊躇されていた患者さんたちにも、できるだけ低侵襲な方法で手術を提供できれば、生活の質の向上や健康寿命の延長につながると考えています。
近年では弁膜症の多くを内視鏡/MICSで行っており、年間100例以上施行しています。
さらに、内視鏡/MICSに加え、オフポンプ冠動脈バイパス術やオフポンプ左心耳閉鎖/切除、短時間での大動脈手術など、低侵襲な手術術式を考慮・実践しています。
どの術式が最も向いているかは患者さんごとに異なりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。